牡蠣は栄養満点、滋養強壮な食材と言われるけどどんな栄養素が含まれ体にどんな効果があるの?“海のミルク”と呼ばれる牡蠣の優れた栄養を“食のスペシャリスト”管理栄養士が解説します。
自分でハードルを上げてしまいましたが…(笑)
牡蠣が好きな皆様に牡蠣の魅力(優れた栄養)を知った上で食材に感謝をしつつ、おいしく牡蠣をいただいてもらえたらと思います!
牡蠣の優れた栄養
- 味覚を正常に保つ亜鉛
- 貧血予防の鉄・銅・ビタミンB12
- エネルギー源のグリコーゲン
- 血中コレステロールの消費・肝機能強化・高血圧の予防のタウリン
牡蠣にはたくさんの優れた栄養が含まれています。これらの栄養素について体でどんな機能を果たすのか詳しく解説します!
亜鉛
亜鉛は体内で作られない栄養素(必須微量ミネラル)なので食事から摂る必要があります。
成人の体内には約2gと微量ですが、すべての細胞内に存在し、多くの酵素の働きに関与する重要な栄養素です。
- 身体の成長に欠かせないDNA合成やたんぱく質合成、成長ホルモンの分泌
- 血糖値を正しい値に整えるインスリンを合成
- 病原体などの異物から体を守るための免疫細胞の活性化
- おいしいを感じる舌表面に存在する味蕾の細胞分裂に関わり味覚を正常に保つ
亜鉛自体が働くというよりは上のような働きに関与し身体機能が円滑に働くのをサポートしてくれる縁の下の力持ち的なイメージです。
鉄・銅・ビタミンB12
鉄は血液の原料であるヘモグロビンの主成分、銅・ビタミンB12はヘモグロビンの合成を助けることからいずれも貧血予防に必須の栄養素です。
鉄
赤血球の赤い色素ヘモグロビンの原料となります。ヘモグロビンは呼吸から体内に取り込んだ酸素を全身の細胞に運び、二酸化炭素を回収します。鉄は体内でリサイクルされ使われるため失われる鉄は少ないのですが、吸収率がとても低いため摂取量としては多く摂らなくてはなりません。鉄には肉や魚などの動物性食品に含まれるヘム鉄と植物性食品や卵・牛乳・乳製品に多い非ヘム鉄の2種類あり、ヘム鉄のほうが吸収率はいいです。吸収率の低い非ヘム鉄も野菜や果物に含まれるビタミンCとともに摂取することで吸収率が高まります。どちらに偏ることなくバランスよく摂りましょう!
銅
赤血球の成分ヘモグロビンの合成をサポートするのが銅の大きな役割です。銅は鉄を酸化させヘモグロビンに組み込めるようにします。そのため鉄が十分にあっても銅がないと鉄はヘモグロビンと結合できず、赤血球はうまく作れないため貧血になる可能性があります。
ビタミンB12
酵素の働きをサポートする補酵素としてアミノ酸や葉酸といった様々な代謝に関与しています。さらには正常な赤血球の生成にも関わっており、赤血球を作るのを助ける栄養素として栄養機能食表示ができるビタミンです。主に動物性食品に含まれるためベジタリアンは不足に注意です。
色は赤色をしており、目薬で赤い液体のものを見たことがありますか?これはビタミンB12の色です。
水溶性ビタミンなので煮汁まで食べられる調理法がおすすめです。
グリコーゲン
自然界に最も多く存在するブドウ糖という糖。穀類や果実に多く含まれており、主にエネルギー源として利用されるブドウ糖が多数結合したものがグリコーゲンです。肝臓や骨格筋で合成・貯蔵されており血糖値を一定に保ったり、筋収縮のエネルギー源として働きます。空腹時など血糖値が下がるとブドウ糖を放出し血糖値を上げ、活動に必要なエネルギーを作ります。
タウリン
タウリンはアミノ酸の一種です。タウリンはあらゆる臓器に存在し、体内でも生成されますがその量は微量で食事からの摂取も必要となります。働きとしては体内の機能の働きを一定に保ってくれる栄養素です。働き過ぎている機能は抑制し、働きの弱い機能は促進させるなどバランスを取ってくれています。主な働きとしては肝機能を助ける、コレステロール値を下げる、その他動脈硬化の予防、目の機能改善、むくみ予防など多岐に渡ります。
タウリンも水溶性の栄養素なので煮汁まで食べられる調理法で栄養を余すことなく食べましょう!
より効果的な食べ方
レモン汁をかけて食べよう!
牡蠣料理に添えられているレモン。味との相性はもちろん、体内に吸収されにくい鉄や亜鉛をレモンのビタミンCやクエン酸のサポートにより体に吸収されやすくしてくれます。
牡蠣の栄養を丸ごといただくなら生!
牡蠣に含まれるビタミンB12やタウリンは水溶性のため水に溶けます。調理法によっては豊富に含まれている栄養素が流れ出てしまいます。加熱の際には焼く・揚げる、また炊き込みご飯や鍋物にしてシメで煮汁まで食べられるメニューであれば牡蠣の栄養を余すことなくいただけます。
新鮮な牡蠣を生で食べる機会があればぜひ生をおすすめします。牡蠣の栄養を一つも逃さずいただけます。
牡蠣の種類と旬
日本で食されている牡蠣は主に2種類で真牡蠣と岩牡蠣があります。それぞれ旬の時期が異なりますので解説します!
真牡蠣の旬
真牡蠣は冬が旬です。海水温が上がる5月頃の産卵に向け冬の間に栄養をたくさん蓄えるため最もおいしくなります。
冬の時期にスーパーでむき身で売られている牡蠣のほとんどがこの真牡蠣です。岩牡蠣に比べると殻が薄く小ぶりですが濃厚な味が特徴です。
主に太平洋側で養殖されています。
岩牡蠣の旬
岩牡蠣は夏が旬です。夏に何回かに分けて産卵するので、栄養を蓄えた時期が真牡蠣より長期になります。産卵期の夏に栄養をたっぷりと蓄えるため食べ頃で、身が大きくジューシーな味わいが特徴です。
主に日本海側で養殖されており、天然ものもあります。
【食べ過ぎ注意!?】過剰摂取の影響 → 日頃の食事から過剰摂取の可能性は低い
牡蠣の限らずですが何物でも食べ過ぎには注意が必要です。今回は亜鉛の一日当たりの摂取基準から何個くらいが食べる目安となるのか考えたいと思います。
18歳~74歳の亜鉛の摂取基準は以下の通り
推奨量:男性11mg、女性8mg
耐容上限量:男性40~45mg、女性35mg
(参考:日本人の食事摂取基準2020年度版)
牡蠣1個に含まれる亜鉛の量が1.5mg~2.9mgのため男性で15個、女性で12個程度が一日の上限量の目安となります。亜鉛を過剰に摂取すると鉄や銅の吸収が阻害され貧血の原因となったり、めまいや頭痛を引き起こしたりする場合があります。
とはいえ一日食べ過ぎたからと言って過剰に心配する必要はありません。
継続的に牡蠣を毎日15個食べれば体に悪影響ですが、継続的に牡蠣を食べ続けることがなければ心配ないかと思います。
しかし痛風の原因となるプリン体も多く含まれているためすでに痛風の人や尿酸値の高い人は要注意です。
普段の食事から亜鉛の過剰摂取の心配はありませんが、食べ過ぎ注意は忘れないようにしましょう!
【要注意!!】切っても切れないノロウイルスとの関係
牡蠣と言えばノロウイルスの印象が強いのではないでしょうか。真牡蠣の旬でもある冬にノロウイルスの流行もピークを迎えます。
感染した際の主な症状は下痢と嘔吐。ノロウイルスは牡蠣の中で増殖するのではなく、人間の腸内でのみ増殖します。感染力が強いため少量であっても体内に入ってしまうと腸内で増殖し、感染から24~48時間の潜伏期間を経て急に症状が現れます。
感染経路はウイルスに汚染された食品を摂取したり、嘔吐物の周りの汚染された空気を吸い込むことによって感染したり、汚染されたものを触り口などから体内に入り込み感染したりと様々です。
ノロウイルスの感染対策
牡蠣が最もノロウイルスの原因食品として有名ですが、アサリやシジミなど牡蠣と同じ二枚貝もまたノロウイルスを自身の体内に取り込んでおり、感染のリスクがあります。
牡蠣は生食用と加熱用と2種類に分けられ販売されています。この違いは牡蠣の育った海域の細菌数の違いによって分けられています。基準値をクリアしている海域の牡蠣は食中毒の危険が低いと判断され生食用として販売されています。
生食用と書かれていても、ノロウイルスの感染確率がゼロかと言われればそうではありませんが、ウイルスに感染する大きな原因は加熱用と書かれた牡蠣の加熱が十分にされず不十分な状態で摂取されるために起こります。不十分な加熱以外の原因も踏まえ、以下の対策3つをしっかりと実践し、おいしく牡蠣を食べましょう!
対策①:しっかりと加熱
加熱用の牡蠣やその他二枚貝を半生の状態で摂取するのが一番危険です。しっかりと加熱してから食べることが重要です。牡蠣の場合、中心部が85℃の状態を90秒以上保つと良いとされています。
生食用であっても体調がすぐれないときや免疫力の低い幼児や高齢者は生食を控えたほうが良さそうです。
対策②:手洗いをする
ウイルスに汚染された食品を触った手で他の食品を触って調理すると手を介してウイルスが広がり危険です。貝類を扱った後には必ず石鹸で30秒ほどかけてしっかりと手を洗い出来れば共有のタオルは使用せず使い捨ての紙タオルで水気をとり次の作業に移りましょう。
仕上げにアルコールを手に噴霧し擦り込めばより効果的です。
対策③:調理器具・調理台の消毒・殺菌
手と同様、貝類を扱った調理器具や調理台はその貝が汚染されていた場合そこから二次汚染の可能性があります。使用後はすぐに洗浄をし、ノロウイルスに有効とされる次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤で殺菌をしましょう。殺菌方法は各商品の使用方法に従って行ってください。
調理器具は食品種類別に分けておくことをおすすめします。ノロウイルスだけに関わらず、ウイルスや細菌の二次汚染を防ぐことができます。肉・魚・野菜・加熱後の食材といったように分けておくと衛生的に良いでしょう。
まとめ
“海のミルク”と呼ばれる牡蠣。その栄養はとっても豊富です。食べ過ぎには注意し、正しい調理方法で安全においしく牡蠣を食べましょう!
コメント